とうとう私のところにも、東京電力から
『自主的避難等に係る賠償金ご請求のご案内』が届きました。
そう、今話題のあれですアレ。
該当地域に暮らす県民に対してひとり8万円、18歳以下や妊婦さんはひとり40万円
(その中で実際に避難をした方に対してはひとりあたりプラス20万円)という例の制度です。
私のごく個人的な意見としましては、これは非常に矛盾だらけのおかしな制度ではないかと強くそう感じています。
まず冒頭に書きました
「18歳以下や妊婦さんはひとり40万円、そして実際に避難をした方はひとりあたりプラス20万円」という項目。
「避難をされた方は避難生活に伴う支出が大きいと考えられる」というのがその理由だそうですが、では逆に避難をしていない18歳以下や妊婦さんにはプラス20万円を支払わなくともよいという理屈は、私にはまるで納得できません。
誰もが避難できる状況だったわけではないし、心配だけど仕方なく残らざるをえなかったという方だって大勢いるはず。
この賠償金が支払われるということはつまり、避難の対象区域に住まいがあるというまぎれもない証拠なのですから、それをただ「避難したかしていないか」だけでプラス20万円の行方が決められてしまうというのはあまりにおかしな話だと思うのです。
放射能に対して最も危険だと言われている年齢層に対してすらこの扱いです。
何が何でも最優先で保護すべき人たちなのではないでしょうか。
どう考えても納得できません。
今回のこの手続き、東電自ら『賠償』ということばを使っています。
賠償というのなら、この原発問題は『事故』として取り扱う、という意味に受け取ってもよいはずですよね。
ならば
『事故』なら当然「過失」が追求されます。
「加害者」とそれぞれの「被害者」によって被害状況は千差万別ですから、本来であれば一つひとつのケースで裁判なりなんなりで過失の内容を具体的にきちんと明白にしなければいけないはず。
こんな風に一律「8万円」だの「40万円」だのという金額設定は、本来であればナンセンス極まりない決め方だといえるでしょう。
そして、これが『事故』だとするなら
被害を被った際に掛かった費用(避難の費用なり治療費なり休業保証なり)は当然過失割合に基づいて支払われなければなりません。
それが済んでようやく、示談なり慰謝料なりという話が始められるわけです。
そうした部分の説明が一切なされず、ただ一方的に
「8万円」「40万円」といわれたって、当然納得できるはずもありません。
決して「金額が少ない」といっているのではありません。
この先放射能の被害がどうなってゆくのか、こうした低線量の放射線を長期間浴び続けたら人体にどんな影響を及ぼすのか全く分からないというこの状況の中で、今後の保障の話が(例え仮の話にせよ)全くなされていないということが大問題だと思うのです。
賠償金8万円を受け取って「はいこれで賠償は済みましたよ」と
もしもそれで終わりにされてしまったら、納得いかないどころのハナシではありません。
無責任も甚だしいと思うのです。
そして何より最も腹立たしいことは
この東電の賠償制度に税金の投入が閣議決定されてしまいましたよね。
これはとことん許せない決定です。
「東京電力が支払いきれない」というだけで、どうして安易に税金で賄おうとするのか
東電及び政府の責任はいったいどこへ行ってしまったのでしょう。
(前提として、今回の原発事故、私は明らかに『人災』だと捉えています)
何の責任も、ましてや何の落ち度もない全国の国民の方々の血税を、どうしてそんな簡単にあてがってしまえるのか、全く理解できません。
納税者をバカにするのも程があります。
(私のようにこの賠償金を受け取る側にとっても、結局のところ自分で払った税金が一部戻ってきているということになるワケです)
そしてまた「巨額の賠償金のために」という理由で、どうして東電の一般社員の方々の給与や賞与が減らされなければいけないのでしょう。
そのくせ東電への天下りは続いているという報道を耳にして、もう腹が立って仕方ありません。
今回の賠償金についてこれだけ納得の行かないことが山積みなのに、それらを申し立てる窓口すら用意されていないのが現状です。
制度に反対して受け取りを拒否したところで、こうしたいち被災者の声などどこにも届かないわけで、つまり意思表示としての拒否すらできないひどい制度です。
でも、こんな風にブログを書いていられる私なんて本当に恵まれている方です。
あの大地震と大津波をやっとの思いでかい潜って行き長らえたかと思えば、今度は原発事故で家を失い、職を失い、故郷を追われて戻れる見込みも全くなく、かといって避難先では職探しもままならず、でも食費や生活費、仮設住宅の光熱費などは自腹で賄わなければならないという、本当に苦しい立場に置かれてしまった被災者の方々に、果たしてきちんと必要なだけの援助が届いているのでしょうか。
本当に心配でなりません。
あれだけ集まった寄付金は一体どこへ行ってしまったのでしょう。
全国の人々のまぎれもない善意の証は、きちんと取り扱われているのでしょうか。
ここまでデタラメな施策を見続けさせられてしまうと、ますます政府に対しての不信が募るばかりです。
まして東電に対してはなおのこと、全ての動きについて頭から疑わざるをえません。
今回の賠償金についての案内書に目を通しても
「閣議で決定されたから仕方なく払う」というような雰囲気が見え隠れしているような印象をどうしても払拭できずにいます。
今回の賠償金制度についての私のこうした捉え方を
「被災者のひがみや関係妄想にすぎない」と受け取られたとしたら、かえって幸いかもしれません。
それほどまでに、この原発事故は私たち被災者にとって『重い』ものがあります。
いつのまにか平常心が保てなくなっているような、ひそかに少しづつ気持ちが追い詰められているような、そんな不気味さがあるのです。
(もしかしたら自分でもなかなか気が付きにくいほどのささやかなプレッシャーを、でも決して止まることなくいつまでもじわじわ与えられ続けているような感じです)
この原発問題が一段落しないかぎり、実際のところ復興どころではありません。
低線量の放射線を長期間浴び続けるということ、それがどういうことなのか
世界中の誰もが未だ知らない未知の事例です。
真綿でじわじわ首を締められるような、そんな空恐ろしさを感じています。
その、漠然とした不安感を日々感じて過ごさなければならない苦しさを少しでも理解していただけたなら、とてもうれしく思います。
一年経っても私たちにとってこの大震災は終わっていないのです。
アタシだって被災者なんだから
ちゃんとアタシの分も書いてよね!!

そうしてあげたいのはヤマヤマなんだけどね・・・(泣)