2016年05月04日

サラバンド(無伴奏Vn.パルティータ第2番−BWV1004より)J.S.バッハ



阪神淡路大震災のときは、何も分かってないガキでした。
無残にも倒壊したビルやねじ曲がった高速道路の映像、炊き出しなどの報道を見て
『大変なことが起きてしまった』とは思いつつでもどこか実感に乏しくて、よく出来た映画でも観ているような、正直その程度の捉え方しか出来ませんでした。


東日本大震災のとき、初めて本当の恐ろしさを身体で理解することができました。
いつまた起きるか分からない余震に怯え、携帯の緊急地震速報のあの音に心底恐怖を感じ、しまいには私たちみな地震の始まりを察知できるまでになりました。(揺れが始まる前の地鳴りのような「ゴゴゴ・・・」という音が聞こえてくるのです)
避難所暮らしを知り、1か月続いた断水に苦しみ、食べ物もガソリンもろくに買えない生活に身も心もくたくたになりました。


そして今度の熊本・大分大震災では、こんな私でももしかしたら
ようやくあの恐ろしさ、悔しさを心から理解できる、分かってあげられる人間になれたかもしれないと、そんな気がしています。
突然いつもの日常が壊される不条理。
常に地面が揺れ続ける不気味さ。
何も悪いことをしていないのに、急に巨大な苦労を押し付けられる残酷さ。
大切な人、物を突然奪われる怒り。無力感とそこから起こる底知れぬ絶望。
そうした、持って行き場のない大きな痛みを抱えてしまった人の気持ちを、今になってようやく共有できるようになれたかもしれないと、そんな風に思うのです。
(でも、自分が実際に体験したことじゃないと他者(ひと)の気持ちが分からないというのは、私はどれだけ想像力や思いやりに欠けた冷たい人間だったんだろうと思います)
災害支援の募金箱に少額の寄付金を入れることくらいしか出来ない私ですが、でもせめて辛い思い、悲しい思いをしている方々へ精一杯の祈りを込めて曲を届けたい。
そんな気持ちを込めて弾いてみたつもりです。
決して気持ちの晴れる演奏ではないと思いますが、もしそれでもよければ
少しでもお聴きいただけたなら大変うれしく思います。


J.S.Bach
無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番 BWV1004より
サラバンド


Sarabande




今回の熊本・大分大震災の報を知り、まず最初に心配したのが大分在住の私の大切なギター友達Y氏の安否でした。
幸いすぐにご無事とのお返事をいただけたのでほっと一安心したのですが、でもやはりまだまだいろんな事が大変な真っ最中だろうなと思い、何か自分にもお手伝いできることがないかを探し始めました。
何より、この熊本・大分大震災の報を受けた時から自分が被災したときの記憶がまざまざと蘇ってきて、それでもう居ても立ってもいられなくなってしまったというのが正直なところでした。


とはいうものの、実際に出来ることといっても悔しいかな募金くらいしか思い付かず、気ばかりが焦っていたのですが、ある日ふと
「ギターで何か出来ないだろうか?」と思うようになりました。
もちろん音楽なんて何の役にも立ちませんが(ましてや私の演奏なんて言わずもがなです)でも、私個人の祈りを捧げるという意味くらいは持たせることが出来るかもしれないと思い
「無駄かもしれないけれど何もやらないよりはマシなはず」と考えたのです。
(でも、もうこうなるとほとんど「自分のため」になってしまってますよね。何のための誰のための演奏なんだか(汗))


そこで、録音に当たり自分自身にルールを課すことにしました。
・震災発生から1ヶ月以内に録音してブログに載せること
・今まで一度も弾いたことのない曲を(つまり譜読みから)仕上げること
そうなると選曲が問題です。
私の腕でも短期間で仕上げられるような曲を探すのがまず一苦労ですし、内容もとても大事です。
東日本大震災のときは「花が咲く」がとても流行りましたし、実際多くの方があの曲から元気付けられたと思うのですが、あんな風に人に元気を与えてあげられるような音楽・演奏は、悔しいかな私にはとても無理、柄じゃないしというのがありましたし、じゃあどんな曲がふさわしいのかと考えてみると、そこではたと困ってしまいました(汗)
それならといっそ発想を転換して、自分自身が被災した時に聴きたかった曲を弾くのはどうだろう?と思って選んだのが今回のサラバンドだったのです。
バッハが好きなのは昔からですが、中でも特にこのVn.パルティータは大好きで、第2番なんてもう神の領域じゃないかと思うほど心酔しているので、今では
「この曲を選んでよかったかも」と思えるようになりました。


演奏自体まだまだ煮込みが足りず、至らない部分ばかりですが(お恥ずかしい限りです)でも今の自分に出来る限りの想いを込めたつもりです。
決して明るく元気付けてあげられるような演奏ではないのですが、もし聴いていただけて何かを感じ取っていただけたなら、これに優る喜びはありません。
どうかどうか、よろしくお願いいたします。


posted by nao at 18:26| Comment(7) | TrackBack(0) | 演奏 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
熊本地震は今も続いていて熊本から山をひとつ
超えた地、伊佐市が我が故郷で今も兄と妹が
住んでいます。

届いた一報は勝手経験したことのないほどの揺れ
で60年も前に建てられた実家が大きく揺れたと
のことでした。幸い倒壊は避けられたとのこと。

熊本に住む同級生・親友や友人と連絡があり皆
無事だということでした。親友は直後から連日
熊本の日赤でボランティア活動を続け瓦礫の片づけをしています。

先日緊急の対ガラス破片かたづけに牛皮手袋130セットが必要ということで仲間と調達して
送りました。最近は4日働き1日休むことで
本人も体調管理をしながら続けていると話して
います。

地震は未だに続いているようなのでnaoさんの
弾くサラバンドを聴いて少しでも落ち着いて
くれることを願っています。

素敵な演奏をありがとうございます。

Posted by Tommy at 2016年05月05日 09:48
Tommyさま

いつもコメントお寄せ下さりありがとうございます。
Tommyさまのお知り合いの方々もみなご無事でおられたということで、本当によかったです。
こちらもとてもうれしくなりました。
一日も早く普通の暮らしが戻ってくることを、心よりお祈りしています。
うれしいお知らせをどうもありがとうございました。



Posted by nao at 2016年05月06日 07:25
東北の時は BWV1008

今回は  BWV1008

やはり いいですね 心が落ち着きます



ほんとうに すぐご連絡いただきありがとうございました。

おっしゃる通りです。
東北の震災の時は なにか たいへんなことが 起こったには違いないけれど やはり 他人ごとでした 反省します

今回 1回目の余震(と 気象庁はいいますが)でびっくりして でも もう来ないと思ったのです
きても たいしたことない ・・・だから ぐっすりの真夜中 

ゴーーという地鳴りがするんですね あれ。
家が 揺れるじゃないんですね あれ
下から 突き上げるように ぐにゃりと ゆがむ 
逃げられないというのが わかりました

その後が しばらく 怖いのです
その恐怖心のほうが 体に悪いですね
しばらく 体の調性が狂いました。

こちらをのぞくのが 遅くなってしまったのは
演奏会が 30日で その後 なんだか 体がだるく
昨日も ミニコンサートがあり 
やっと ゆっくりブログをのぞきました。

この お礼は 何に って 思うけれど
スイィーツでも のんべの方でもなく
やはり ギタ―で お返しできたらと思います。


落ち着いたころ こちらで 
私たちにできる コンサートできるといいなぁと思っています。

日本中の アマチュアと称してはいるけれど naoさんみたいにプロ級な方たちで 
「いいよ やろう!」と
おっしゃってくださる方たちと
ネットワーク構築中です

実現にむけて がんばりますね。
それまで 一番 お好きな曲 2曲から 3曲選んでいてくださいね

Posted by kao at 2016年05月14日 17:56
あ、今回 1004とうつのを 間違えてしまいました 
トホホ まだ 脳に余波が 立ち直れないわーー(うそです)
Posted by kao at 2016年05月14日 17:57
kaoさま

コメントどうもありがとうございます。
今回のそちらの大地震もようやく収まってきつつあるようですが、でも未だ避難生活を強いられている方々を見るととても心が痛みます。
そんな中、kaoさまがご無事で本当によかった。
ほっと胸を撫で下ろしています。

残念ながら、揺れへの恐怖はしばらく続いてしまうかもしれません。
でもいつか必ず克服できる日がくると思いますので、どうかそれまで何とかがんばってほしいと思います。というか一緒にがんばりましょう。
p(・∩・)q

それと
kaoさまが進めておられるその企画、本当に素晴らしいと思います。交友関係の広いkaoさまならではのすてきな企画だと思いますので、ぜひぜひ実現目指してがんばって下さいね。
そしてその時はぜひ私にも何かお手伝いさせていただければと思っています。
もしよろしければ、どうぞ何でもお気軽にお申し付け下さいね♪

それでは
今回もお聴き下さいまして本当にありがとうございました。

Posted by nao at 2016年05月15日 08:13
naoさま

naoさんの気持ちが絶対に届いています。
ご自身の経験を恨み嘆くのでなく、こんなにも愛を込めて精一杯表している・・・素敵な演奏です。



私にできること第一歩、おつりの募金を今日しました。yukii

Posted by yukii at 2016年05月15日 23:01

yukiiさま


拙い演奏をいつもお聴き下さいまして本当にありがとうございます。
何よりそんな風に温かく受け止めて下さって、本当に感激しています。
「祈る側の私が癒やされてどうすんだ!」と気恥ずかしい思いもありますが(恥)でもyukiiさまにそう言っていただけたことでもしかしたら祈りの気持ちが少しは届いているかもしれない・・と思えるようになりました。
認めて下さって心からありがとうございました。
精一杯の感謝の気持ちを込めて、これからも弾き続けてゆきたいと思います。

Posted by nao at 2016年05月17日 19:35
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